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「食べちゃいたいくらい」

■□■□■□

「…………?」
目覚めると体がズキズキと痛んだ。
寒さを感じ、辺りを見回す。
森の中、何故私は裸なの?
周りには自分の服が散らばっていた。

記憶を搾り出すけれど、頭に靄がかかったように思い出せない。
思い出したくないのかもしれない。
ハッキリとはわからないが断片的な記憶を探る。
声だけがぶつぶつと。

『いらっしゃい。
食べちゃいたいくらいかわいい私のロリエッタ。』
布団に潜るおばあさん?
だみ声だわ……なんだか汚い声。

『おばあさん声が随分違うけれど』
『風邪を引いてしまったからね』
ゲホゲホと咳

『……おばあさん、随分口が大きいのね』
『お前を食べるためさ』
怖い

『食べちゃいたいくらいかわいいよ』
……誰?
頭が痛い。
一番汚い、汚い声が響いたんだ。


ああ、そうだ。狼さんね。
私は狼さんに食べられたの。
大好きなおばあさんも。
それ以外……思い出せないわ。
じゃあ何故助かったのかしら?

点々と血の跡。
……狼さん?
生きてるんだ。

よく見ると噛み跡や切り傷が私の体に多々あった。


そうか。
私はきっと狼さんに復讐するために蘇ったんだわ。

……そうよ、死んでも死に切れない。

周りに散らばった服を摘み、近くの井戸で洗う。
古い水のようで錆びたような薄い赤が混じっていた。
この際仕様がないのね。

少女の力できつく絞ってもが綺麗に乾く訳はない。湿ったままの衣服を身に纏う。
汚い。
最後に私の証の頭巾をつける。

「おばあさんは狼さんに殺されたのね」

歩きはじめると足元でカラン、と音がなった。
視線を落とすと、汚らしく赤黒い液に塗れた狩猟用らしいナイフが転がっていた。

「狼さんはどうやっておばあさんを殺したのかしら。
やっぱり食べてしまったのだったら牙かしら?
それともこんなナイフでザックリ?
それとも……」
誰に言うでもなく虚ろ気に呟く。

錆びたナイフでゾリリと髪を切る。
長かった軟らかな金髪はギリギリと尖った肩ほどの長さになってしまった。

「ふふ、狼さん……殺してあげる。
おばあさん…大好きなおばあさん、仇は討つからね」
落ちた髪を踏みにじり、暗い笑いを浮かべた。


まだハッキリしない頭で考える。
どうすればいいの?

とにかくふらつく足取りで家に向かう。

私が一度死んでからどれほどの時間が経ったのかは解らなかった。
数時間?あるいは数日かもしれない。
人が恋しかった。


家への道を辿ると、花畑。
………ここでお花を摘まなければおばあさんは助かった?
自己嫌悪に陥りそうだわ。
狼さんへの憎しみと自分への後悔の念が渦巻く。
泣きそうになりながら歩くとようやく家の明かりが見えた。

お母さん……

戸をうすらと開けるとお母さんが慌てて走ってきた。

「どこにいってたの!?
心配したんだから!」

私以上に涙を溜めて、お母さんは私を抱きしめてくれた。
体温。
暖かい。
私はお母さんをきつく抱きしめ返すと、ボロボロと泣いてしまった。

「もう、お母さん…あなたがどこかにいったらどうしようかって……」

お母さんは私の涙を拭って、顔を見つめる。
愛おしそうに、愛おしそうに。

「あぁ、愛してるわ。好きよ。
……食べちゃいたいくらいかわいいロリエッタ……。」
ズキリと頭が痛んだ。


『食べちゃいたいくらいかわいい』


「…………あなた……誰?」
身震いするほどの恐怖。
それ、狼さんが言ってたわ。
「え?」
キョトンとしても無駄。
私は知ってるの。
「あなた、狼さんね?」

「ロリエッタ?何を言ってるの?」
惚けちゃって。
随分と化けるのがお上手になったわね。
だけど目が。
私を見る目が違うのよ。
「ほらやっぱりそうだ。
お母さんはそんな目で私を見ない。」
「どうしたの?何かあった!?」
慌てちゃって。
ボロが出そうよ。


「狼さん、今度はお母さんになろうとするの?」


もう騙されない。

私は持っていたナイフを迷いなく振り下ろした。
お母さん……いえ、狼さんは中々切れなかった。
やっぱりナイフが悪いわね。
錆びてしまってるもの。
けれどその方が苦痛を与えられて良いのかしら?

噴き出す血は鮮やかに。
狼さんの血だと思うと嬉しくて堪らなかった。
おばあさん、お母さんの仇を私が討ったんだもの。

………狼さん?
化けるのはもういいわ。

化けの皮……文字通り皮を剥がしましょうか。

剥がれない。
随分と上手く化け………


私は悟った。
お母さんは"本物"だったと。

「うぁああぁぁあぁあああぁぁあ!!」

自分の声に耳が痛い。
叫び、泣いた。
喉が枯れそうなほど。
喉が潰れそうなほど。

お母さん。
私が殺したお母さん。


「何があった!?」

後ろから声がした。
振り向くと猟師さん。

「え?ロリエッタ……?」
「違うの……違うのよ!」
猟師さんは泣きじゃくる私を無言で抱きしめてくれた。
何も聞くまいと、優しく。
猟師さんも聞きたいでしょうに。
猟師さんも逃げたいでしょうに。
それでも。

「あ、俺の。」
猟師さんは呟いた。
力が緩み、お母さんの方へ手が伸びた。
猟師さんが触れたのはナイフ。
お母さんに刺したままのナイフ。
私の拾った狩猟用ナイフ。

どうして猟師さんが?

猟師さんは再び呟いた。
「ロリエッタ、生きてたんだ。」

どういうこと?

「てっきり死んでたもんだと。
あぁ、なら悪いことしたなぁ……」

ねぇ、どういうこと?

「けど、やっぱり死んでるより生きてる方がいいなぁ。」

何を言ってるの?


「あぁ、食べちゃいたいくらいかわいい」


また、蘇る。
今度はもっとはっきりと。

汚い汚い声だった。
そう、こんな……

頭に鮮明に蘇る。


私を襲った狼さん。
おばあさんを食べて。
手首に噛み跡。
痺れて動けないの。

猟師さん。
狼さんを一突きで殺してしまって。
井戸に捨てた?

私の方にやってきて、厭な笑いを浮かべたわね。
服が、剥がされるの。

猟師さんは呟いた。
『食べちゃいたいくらいかわいいよ。』

あとは、ねぇ、分かるでしょう?
私は"食べられた"の。


私は死んでなんかなくて。
蘇ったなんか幻想で。

あぁ、なんてこと。

お母さん、本当にごめんなさい。

猟師さんは赤く染まった。
中々切れない錆びたナイフ。

最後に一掻き首を掻く。
中々切れない鈍いナイフ。

やっぱり痛いわね。

おばあさんは殺されて、狼さんは井戸の中。
犯されたての私の体。
お母さんは真っ赤。
猟師さんも真っ赤だわ。
そして私も。

私の頭巾はより真っ赤に染まったけれど、まだ似合うといってくれるかしらね?


□■□■□■

赤頭巾ちゃんを書きたかったんですが終わり方がびみょいことに(´・ω・`)
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BLNLGLばちこい!です
カラオケ好きで歌下手な迷惑っ子です。

wj・BASARA・ラメント・咎狗・絶望先生・ディスガイア・ウサビッチ・ジョジョ・日和・SQ・aph などなど
その他いっぱいゲーム漫画小説大好きです。
雑食で食い散らかしてます←
でも今一番熱いのは堀宮でございます。
でも基本CP的な意味でも雑食でs((
音楽のほうも雑食です。

寂しがり屋なので絡んでいただけると飛び上がって喜びます。
最初は控えめですが慣れたらうっと惜しいまでにハイテンションで絡みだします。
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