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愛されたがりとやんでれくん



「俺ねー、愛されたいんだ」
愛されたがりは今日も笑う。
飲み会の席でさほど強くもない酒に程よく酔いしれ上機嫌にそうこぼす。
「また言ってる。やんでれくんが怒っちゃっても知らないよ」
気心知れた友人が冗談めかしてそう告げるけれど愛されたがりはそんな自体考えもしない。
「やんでれくんが? 俺に怒るはずないんだ」
少し離れた席で飲んでいるやんでれくん。
彼は酷く耳がいい。愛されたがりのことに関してならなおのこと。
おかげで愛されたがりの話すことなんて丸聞こえ。
かといってそれが事実である以上それを否定することもできず、俯いて拳に少し力を入れるくらいしか できなくて、愛されたがりの言葉に耳を傾けるのをやめた。
 
「……すき、だよ」
足取り不確かな愛されたがりに肩を貸す帰り道。
回す腕に少し力を込めて一音一音確かめるように告げる。
「ん、知ってる」
ぽ、と照った頬は照れなんかじゃなく脳に回ったお酒のせい。
いつもどおり、或いはいつもより少し締まりなく緩んだ口元を上げて愛らしく細まった瞳でやんでれく んを見つめる。
やんでれくんはどうしようもなくいとおしくなって、ぎゅっと愛されたがりを抱き寄せた。
「絶対誰にも渡したくないんだ……」
「知ってる」
『俺も好き』だとか『離れていったりしないよ』だなんて肯定的な言葉は口にしてくれなかった。
『知ってる』と、本当に何でも知っているような目でそういうだけ。
今日一日のたった二度のそれだけのことが不安で不安で仕方ない。けれど例え自分を好いているわけで はなくてもそばに居てくれるだけでもありがたいのだとやんでれくんは言葉を飲み込んだ。
 
「愛されたがりってかわいいよね」
そんな台詞を耳にした。同じゼミの男の子。
コンビニの夜勤バイトをしていると、雀の涙ほどに交わした会話でそう聞いた。
夜勤くんは愛されたがりの頭を撫でた。
コミュニケーションにスキンシップを厭わないらしい夜勤くんは満足そうに笑う愛されたがりをもう少しだけ撫でた。
不安になるのはやんでれくん。
 そんな顔して笑わないで。
 俺がいくらでもしてあげるから。
 夜勤くんは身長も高くて大きな手。そういう人が好きなの?
 なら俺じゃ足りない?
マイナス思考に頭が回る。
やんでれくんは自分の細く白い、不健康そうな体を浮かべた。
酷く酷く不安。
でも放課後愛されたがりの家へ行けば甘い甘い抱擁が待っていて『好きだよ』とおざなりであろうと言われてしまえば満足感だけが頭を支配する。
愛されたがりのすべてがやんでれくんを動かすのだと、しみじみ感じさせられる。
彼なしでは生きていけない。溺れてしまった。まるで酸素だ。
愛されたがりがいなくなってしまえばやんでれくんはきっと死んでしまうのだろう。
薄くなりかけた太腿の切り傷が呼応するように疼くのを感じた。
 
手首なんて切りやすいだけだ。
すぐに見つかってしまうじゃないか。
愛されたがりがすぐに気付いてしまう。
万年長袖を着るほどやんでれくんは暑さに強いわけじゃないから、と。
そうして選んだのが太腿だった。
手首に傷があろうと愛してくれた愛されたがり。
彼にあまり心配させたくない。
だから見えにくい場所がいいんだと。
自傷行為ですら愛されたがりに支配されている。
随分と少なくはなったものだけど、それでも時折考える厄介ごとに頭が痛くなりすぎたとき、自分の必 要性が不安定になったときはそこを傷付けることにした。
日常において見つかりにくくはなったものの行為の際に見つかってしまう。
愛されたがりは時折新しい傷を見つけてはいとおしそうに見つめ
「またやったでしょ、仕方ないなぁ」
と舌を這わせる。
その眼差しと熱い舌が一層やんでれくんを溺れさせる。
きっとやんでれくんの自傷行為は終わらない。
 
「あぁ、愛されたがりなら夜勤くんと呑みにいくって」
お友達はそういった。
狙っているらしいよ、とも笑いながら告げられた。
あの目糞ビッチめ、思わずやんでれくんからそんな言葉がこぼれる。
彼のことだから夜勤くんの自分に対する感情なんて分かっていて、それでも誘われるままに頷いて、やんでれくんのことなんて考えもせずに夜勤くんに付いていったのだろう。
 俺が居るのに俺が居るのに俺が居るのに俺が居るのに俺が居るのに
やんでれくんは気が気じゃない。
マイナス思考なやんでれくんのこと、酷く鬱々とした妄想だけがずっとずっと伸びていく。
 夜勤くんの勧めるままに
 お酒を呑んで
 「愛されたがりってかわいいよね」
 夜勤くんは頭を撫でる 
 「ありがとう」
 しまりのないすきだらけのえがお
 やきんくんはだきしめる
 あいされたがりがとられてしまう
 おれのあいされたがり
 だれにもわたしたくない
「何処に行った」
弱い弱いやんでれくんは今は居ない。
冷たく尖った声が尋ねる。
まるで別人、暗い眼差しはお友達なんて見ちゃいない。
愛されたがりだけがやんでれくんを動かす。
「ねぇ、愛されたがりと夜勤くんは何処?」
「そ、そこまで知らないよ…」
「役立たず」
知らないならば用は無いと、存在すら否定するように通り過ぎる。
電話
電話
電話
電話
『もしもしー』
予想通り少し酔っているようで呂律が怪しい。
愛されたがりはやんでれくんを放っておいたりはしない。
「もしもし、愛されたがり?
 今誰と何処にいるの」
『今ぁ? 夜勤くんと、駅前の檜垣屋にいるよぉ』
愛されたがりはやんでれくんに嘘を吐いたりはしない。
檜垣屋。個室のある居酒屋。
下心は?
あるに決まってるだろう。
個室。
ふざけるな。
君は、俺のものだ。
やんでれくんは走る。
無い体力を搾り出して走る。
「部屋は」
『一つ目の角のすぐ左』
 
扉を破るかのような勢いで開ける。
部屋の中には上機嫌そうな夜勤くんに肩を抱かれた愛されたがりと、やんでれくんの登場に目を丸くする夜勤くん。
二人を眺めるやんでれくん。愛に濁ったその瞳は何を映すのだろう。
その指が愛されたがりに触れたのか。その腕が愛されたがりを抱きしめたのか。その口で愛されたがりにささやいたのか。
やんでれくんには夜勤くんのすべてが憎らしく思えた。
その体が夜勤くんに触れられ、その体が夜勤くんに抱きしめられ、その口で夜勤くんに応えたのか。
やんでれくんには愛されたがりのすべてが恋しく思えた。
汚されてしまった。
綺麗な綺麗な愛されたがりが。
あぁなんてことだ。
「夜勤くん」
やんでれくんは名前を呼ぶと夜勤くんを殴りつけた。
力いっぱい。何度も何度も何度も。
「俺の愛されたがりに手を出すな。俺のなんだから。
 抱きしめないで撫でないで触れないで見つめないで視界に入れないで好きだなんて思わないで」
やんでれくんの中の愛されたがりは絶対的天使であり神である。
それを他者がどうにかしようなど許されるはずが無い。
愛されたがりは何も悪くは無い、悪いのは夜勤くんなのだ。
やんでれくんが制裁を、与えなければならない。
許されるべきでない。
ねぇそうでしょう。
愛に狂ったやんでれくん。憎しみが溢れる。
憎しみは拳となって夜勤くんに当てられる。
時折視界の端に入る愛されたがりは止めるでもなく何処か嬉しそうに口角を緩めていた。
このまま殴り続けたなら夜勤くんは死んでしまうだろうか、やんでれくんはぼんやりとそんなことを考えながらも手を止めることはしなかった。
制裁なのだから。
「やんでれくん、ストップ」
愛されたがりがふと仲裁に入った。
愛されたがりがそう言うのなら止めなければならない。
「ごめんねぇ、夜勤くん」
愛されたがりは申し訳なさそうなようもなく夜勤くんにそう告げてる。
やんでれくんの贔屓目には、まるで追い払ったかのように映っていた。
 
夜勤くんを帰らせた後、愛されたがりはやんでれくんの手をとった。
「おうち、帰ろう」
そう告げては手を引いて。
「なんで、なんで…」
やんでれくんは決して離さないようにしっかりと愛されたがりの手を握り返しながらぼろぼろと大粒の涙をこぼした。
 どうして夜勤くんについていったの
 俺のことはどうでも良いの
 俺はこんなに好きなのに
 何が足りないの
言いたいことは頭を渦巻くけれど口から発せられるのは説明を求める弱い言葉だけだった。
もうそろそろ愛されたがりの家。結局帰路は会話らしい会話など出来なかった。
やんでれくんはただただ入り混じる不安と愛おしさとに押しつぶされそうなだけ。
扉を開くと愛されたがりは一歩先にはいってやんでれくんを迎え、一言
「おかえり」
と言って笑った。
やんでれくんはそこが玄関であることなど忘れ、とめどない愛を愛されたがりに与えた。
「ねぇ、大好き。大好き大好き大好き大好き俺は愛されたがりが何より誰より大好き愛してる。
 愛されたがりは俺が守ってあげるから。愛されたがりは俺だけを見てて。俺以上に君の事愛せるやつ なんて居ないから。
 どうしてあんな奴についていくの俺には愛されたがりしかいないのに」
何度も何度も深く口付ける。そこに居る愛されたがりの存在を確かめるように。
愛されたがりは明確な答えを用意するかわりにやんでれくんを抱きしめて、口付けに応じるように舌を絡めた。
終わりの無いような長い口付け終わったとき、愛されたがりは口を開いた。
「やんでれくん、大好きだよ。大好き」
やんでれくんの心はその一言だけで満たされ、今までのことなどどうでも良くなってしまった。
他の人のどんな言葉よりも褒美よりも愛されたがりに与えられる愛のみがやんでれくんを喜ばせる。
愛してる、愛してる、と何度もやんでれくんは恥ずかしげもなく告げた。
 
愛されたがりはにんまりと笑う。
その笑顔はいつもより数倍、恍惚に満ちていた。
きっと愛されたがりはまた同じことを繰り返す。
愛されたがりが愛されたいのもやんでれくんだけなのだ。
その他なんて材料に過ぎない。
二人の歪んだ愛は深く深く絡みつく。
やんでれくんの思いこそが愛されたがりを動かすのだ。
愛されたがりもまた、深い愛を与えてくれる彼なしでは生きていけない。
やんでれくんがいなくなってしまえば愛されたがりはきっと死んでしまうのだろう。
「俺ね、愛されたいの」
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プロフィール

幸野

Author:幸野
夢見る乙女モドキのJK2の腐れちきんです
BLNLGLばちこい!です
カラオケ好きで歌下手な迷惑っ子です。

wj・BASARA・ラメント・咎狗・絶望先生・ディスガイア・ウサビッチ・ジョジョ・日和・SQ・aph などなど
その他いっぱいゲーム漫画小説大好きです。
雑食で食い散らかしてます←
でも今一番熱いのは堀宮でございます。
でも基本CP的な意味でも雑食でs((
音楽のほうも雑食です。

寂しがり屋なので絡んでいただけると飛び上がって喜びます。
最初は控えめですが慣れたらうっと惜しいまでにハイテンションで絡みだします。
気をつけてください。
お友達切実に募集中ですー

キリ番とかやってみる?



てきとーに踏んだかな?って方はお知らせとかいただけたら^^

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